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色で愛車をパーソナライズする
ポルシェのPaint to Sampleとは

「自動車の製造に対しては、量ではなく質が重要だと信じている」

フェリー・ポルシェが自伝で語った言葉の通り、お客さまの理想の一台を叶えるため、ポルシェでは膨大な種類のカスタマイズ・オプションを揃えています。

数あるオプションの中でも、車体を彩る「ボディカラー」に悩む方は多いのではないでしょうか。

ボディカラーの選択は、新車オーダーの際にはどんな方でも必ず経験する、「うれしくもあり、悩ましくもある」最初の“関門”です。その車のほぼすべての印象を決めてしまうからこそ、決断が難しいとても悩ましい選択なのです。

 

そこで今回は、ボディカラーにおいて、そもそも最初に選べる選択肢やカスタマイズ・オプションの詳細について、あらためて深掘りしていきたいと思います。

エクスクルーシブ・マニュファクチャー・パートナー専任担当、シニアセールスエグゼクティブ丹田勝士

今回取材で訪問した EBI GROUP のポルシェセンター青山は、全国でも2店舗(関東では1店舗)しか存在しない、Exclusive Manufaktur Partner[エクスクルーシブ・マニュファクチャー・パートナー]として、ドイツ本国より認定されている、カスタマイズに特に秀でた店舗です。

シュトゥットガルト本社の専門トレーニングを定期的に受けている専任担当も在籍するため、より深い話を聞くことができました。

感性に響く
新“スタンダード”カラー

新たな車に出会い、ボディカラーを決めるとき、どのようにカラーを選びますか。

休日用に気分が上がる色合いを、ビジネスシーンに合うシックな色合いを、はたまた数年後の売却を視野に入れて人気な色合いを……想いは人それぞれです。しかし、長く相棒として付き合っていくとしたら、自ずと“自分らしさ”をボディカラーに反映したくなることでしょう。

ポルシェは〈356〉が生誕してから現代に至るまで、外装・内装ともに趣向を凝らした、さまざまなカラーを展開してきました。

〈911 2.0 Targa〉 model year 1967 

なぜなら、ポルシェが造り出すスポーツカーはいつの時代においても“特別な存在”だからです。ポルシェジャパンのWEBサイトにある「Car Configurator(カーコンフィギュレーター)」を見てみると、まずは通常で選択できる、“スタンダード”なエクステリアカラー(別途費用も含む)のラインナップがずらり。

〈Taycan Turbo GT〉 model year 2024

一般的な自動車ブランドにおいて、SUVやEVモデルで通常選択できるカラーは、だいたい3〜6色くらいが一般的です。

しかし、ポルシェにおいては、選択肢が一番多いモデルである〈タイカン〉では、なんと17色ものカラーを標準で取り揃えています。新たに登場した新型〈マカン Electric〉を見てみても、やはり14種類も選択肢があり、イメージが大いに広がります。

ポルシェの新たなカラースキーム

実はポルシェは、2024年1月にすべてのモデルシリーズのカラースキームを改訂して、標準で選べるボディカラーを「コントラスト」「シェード」「ドリームス」「レジェンズ」の4つのカテゴリーに一新しました。

ポルシェのこの新しいカラースキームは、ドライブ・シーンだけでなく、エモーショナルな表現をカラーに落とし込んでいるため、お客さまの感性により直接的に響くことでしょう。

〈タイカン〉のスタンダードなカラースキームは全17色。

標準で選ぶことができる豊富なカラーラインナップがこれだけ多いと、お客さまは大いに悩んでしまうかもしれませんね。
しかし、中にはまだ物足りなさを感じる“強者”もいるのではないでしょうか。

そんなときにおすすめのボディカラーにおけるカスタマイズ・オプションを、Exclusive Manufaktur Partner[エクスクルーシブ・マニュファクチャー・パートナー]の専任担当である、シニアセールスエグゼクティブ丹田勝士(以下、丹田セールス)に話を聞きました。

ドライバー自ら個性を表現する
「Paint to Sample」

「ポルシェ本社工場内には、『Exclusive Manufaktur(エクスクルシブ・マニュファクチャー)』というカスタマイズを専門に扱う特別セクションがあります。

その特別セクションが実現させる特注カラープログラム『Paint to Sample(ペイント トゥ サンプル、以下PTS)』では、現在160色を超える外装色サンプルを抱えており、必ずやお客さまのお好みのものが見つかるでしょう」(丹田セールス、以下同)

〈356〉の販売が本格化した1950年代当時から、愛車をよりパーソナライズしたいという要望は根強くあったようです。PTSというプログラムは、その長年に及ぶ要望を誰もが叶えることができる、より分かりやすいプログラムといえるでしょう。

PTS工房内でのペイント作業の様子。特別限定車は場合によって職人の手作業によってペイントされる。

160色を超えるカラーラインナップには、かつてファンを魅了した歴史的なモデルにちなんだカラーも数多く復活しています。お客さまの記憶の中に眠る、あの“ときめき”を蘇らせるようなカラーが必ずや見つかることでしょう。

職人魂が生きるExclusive Manufaktur
時間とコストをかけた分だけ
納得のいく仕上がりに

PTS部門を抱えるエクスクルーシブ・マニュファクチャーでは、工場内のオートメーションラインで製造される通常の市販モデルとは違い、専門のスペシャリストたちが手作業によってカスタマイズを施していきます。

元々はドイツのクラフツマンシップに基づくマイスター(職人)制度を守るために始まったプログラムという側面も持っているだけに、オーダーにはコストと同時に、職人の作業時間を加味した時間も必要となります。

「PTSのオーダーには、通常生産期間に加えて、さらに45日以上の猶予をいただいております。
というのも、スタンダードカラーの生産車両の塗装作業はオートメーション化されていますが、PTSを選択された車両は、塗装時にはそのオートメーションラインには載りません。
ツッフェンハウゼン工場内(ドイツ・シュトゥットガルト)のPTS専用工房内に、お客さま専用の塗装ブースを設けて作業を行っていきます」

ツッフェンハウゼン工場内に設置された市販モデル用の塗装プール。
PTS工房内でスプレー塗装されている様子。

「まずは、専用ブース内に設けた塗装プールにシャシーを沈めて染め、その後ドアやボンネットをスプレーで吹き上げていきます。なお、モデルロゴなどの細かなパーツに関しては、別サプライヤーから供給されてきます」

「ボディ本体の塗装やサプライヤーからの供給パーツの準備がすべて整ったら、すべてのパーツが一か所に集められ、この時点で初めて通常の生産ラインに乗ることになります。

なお、エクスクルーシブ・マニュファクチャーの塗装ブースでは、別のカラーを選択された車両に塗装が混じらないように、1台の作業が終了次第、工房内は一度すべてゼロにリセットされます。

このように、PTSのカラー塗装に関しては、オーダーのたびに工房を独占状態にしなければいけません。そのため少なく見積もっても、塗装関係だけで45日以上かかる、というわけです」

細かなロゴまで抜かりなく。

話を聞いて、思わず「工房の様子を見てみたい!」と声に出してしまいましたが、当然のごとく完全社外秘となります……。

実際に我々ポルシェビジネスに関わる社員においても、工場見学の際は、スマートフォンを没収され、秘密保持契約にサインを求められます。生産に関しての高い緊張感が伝わってきますね。

完全オリジナルカラーを生み出す
「Paint to Sample Plus」も

もしお客さまが、PTSというカラープログラムでも飽き足らず、特に強い思い入れのある独自カラーをお持ちでしたら、「Paint to Sample Plus(ペイント トゥ サンプル プラス、以下PTS Plus)」というスペシャルプログラムもご用意があります。

このオプションではカラーサンプルを元に、職人たちが様々な塗料を組み合わせ、お客さまが求める完全にオリジナルのカラーをつくりだすことができます。ただし、PTS Plusのオーダーにおいて、PTSよりも遥かに厳しいお願いをお客さまにしなければいけません。

 

オーダーをご希望の場合は、希望の色が完璧にわかるカラーサンプル(色紙でも、ネイルカラーでも、どんなものでも構いません)をお持ちいただきます。そのサンプルをもってドイツ本国のPTS工房にリクエスト後、そのカラーを再現できるかテストします。

工房では、FRP、アルミニウム、スチールなどエクステリアに用いる各素材に塗装したうえでの再現テストはもちろんのこと、雨風、耐熱、衝撃など様々な外部要因に塗料が負けないか耐久テストを繰り返し行っていきます。

その過酷なテストに合格できれば、晴れて、自分だけの色を愛車に載せることができるのです。しかし、お客さまへの“厳しいお願い”とはテストだけではありません。

リードタイムは1年以上いただきますし、テストにどうしても耐えられないカラーであれば、長い待ち時間にもかかわらず、結局は実現に至らないことも当たり前のように発生します。そういったリスクをご納得の上、“覚悟をもって”オーダーをいただく必要があるのです。

 

もっとPTS Plusを効率よく利用できないかと丹田セールスに尋ねたところ、よりよいオプションの活用方法のアドバイスがありました。

「PTSのカラーコレクションは順次、廃盤や新規色の追加などでカラーが入れ替わっています。そのため、過去のPTS廃盤色の中に好みに近いカラーが見つかれば、PTS Plusを通じてオーダーすると、案外アッサリと実現することができます。

要は、すでに過去存在していたカラーであれば、様々な再現・耐久テストは通過しているので、リードタイムも短縮化され、実現可不可のギャンブルもせずに済むため、安心して他にはないご自身の車の特注カラーとしてオーダーができるのです」

迷ったら展示車両で
「Paint to Sample」事例を見てみる

どんな色にしたいか、なかなか見当がつかない……。けれども、ポルシェのカラーオプションが気になる方は、ぜひ各ポルシェセンターの展示車両をご覧いただくのが近道です。

特に、ポルシェセンター青山では、Paint to Sampleで外装を彩った車両を常時展示しています。取材時には、【PTS】ダイヤモンドベージュメタリックというカラーで塗装された〈Cayenne Coupe〉が展示されていました。

【PTS】ダイヤモンドベージュメタリックで塗装された〈Cayenne Coupe〉

通常よりも濃い目のシャンパンゴールドに輝くそのボディは、はっと目を惹く美しさで、特に女性のお客さまが足を止めて見入っている姿が印象的でした。

ゴールドは陰影が強く出る夕方頃が特に美しく、最高峰のシャンパンを彷彿とさせるような上品なカラーです。多くの人が行き交う表参道の街並みに抜群に映えていました。

また、2022年には鮮やかなオレンジ色に輝く〈マカンGTS〉も展示されました。

このガルフオレンジは、1960〜70年代にポルシェレーシングチームのスポンサーであったガルフ石油のコーポレートカラーからインスパイアされています。当時のル・マン24時間レースでは、ガルフカラーを纏った最強のレーシングマシン〈917〉が大活躍しました。(別途、ヘリテージコラム参照 <リンク>)

このように、お客さまの記憶に深く刻まれた歴史的なカラーに染め上げるのも、ポルシェでしか成し得ないPTSならではの魅力です。

ノウハウを多数持つ
EBI GROUP の各拠点へご相談を

PTSで選べるボディカラーはモデルによって少しずつ異なります。例えば〈911 Carrera〉ではスタンダードカラー14色に加えて、PTSの122色から選ぶことが可能です。「Car Configurator」を見てみると、スタンダードカラーの下に「ペイント トゥ サンプル(PTS)」のレインボーチャートがあります。

クリックすると、明色から暗色まで多彩なカラーをすぐに見ることができるので、ぜひチェックしてみてください。しかしボディカラーの選択に少しでも悩まれたら、「まずは EBI GROUP の各拠点にご相談ください!」と丹田セールスは話します。

Paint to Sampleのサンプルカラーボックス。関東のポルシェディーラーの中では、青山でしか手に取って見ることができません。

「ネット上のカーコンフィギュレーターでは、お客さまが気軽にご自宅で、自分だけの夢のポルシェをつくることができます。しかしご留意いただきたいのが、平面的なモニター画面で見る色と、実際に直接サンプルで見る色とではかなり印象が異なる点です。

ポルシェセンター青山には、関東で唯一のPTS専用カラーサンプルボックスがございます。EBI GROUP の各拠点のお客さま担当営業にご相談いただければ、いつでもこのサンプルを青山店でご覧になることができます。

地方のお客さまもサンプルカラーを見るために、遠路はるばるお越しになる方もいらっしゃるほどなので、悩まれたらぜひ EBI GROUP 各拠点の担当営業にご相談ください」

カラーで自分だけの表現を
多くの方に実現していただきたい

あまりにも膨大な、ポルシェのカラーコレクションに驚かれた方も多いのではないでしょうか。

なぜここまでカラーが増えたのか。それは歴代のお客さまからの強いご要望が数限りなくあったからでしょう。

ポルシェが生まれてから現在まで、多くのユーザーが、ご自身やご家族の特別な思い出に寄り添う特別なカラーを愛車に纏わせたいと考え、リクエストされてきました。思い入れの深いカラーは、オーナー自身のアイデンティティに深く紐づき、それを手にすることで想像以上のパワーを人生に与えてくれます。

Paint to Sample、そしてPaint to Sample Plusは、そのようなお客さまのご要望やこだわり、夢を叶えるための究極のカスタマイズ・オプションです。

EBI GROUP には、過去3万1千台以上のポルシェを販売してきた、圧倒的な実績と経験がございます。そして、お客さまの唯一無二のご要望を形にしてきたセールスコンサルタントたちが多数在籍しています。

まずは、フィッティングラウンジにてコンサルティングの上、お客さまのこだわりを実現する方法やオプションを丁寧に一つ一つご提案いたします。ぜひお気軽にご予約のうえ、ご相談ください。

Words:Yuki Kobayashi / Tatsuhiko Kanno
Photographs:SHIZUKA SHERRY / Porsche AG

– TEAM EBI DIGITAL STUDIO –