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空冷ポルシェの祭典
日本初開催「LUFT TOKYO」をレポート

2026年3月14日、東京高速道路(通称・KK線)にて「Luftgekühlt(ルフトゲクールト)」主催のイベント「LUFT TOKYO(ルフトトウキョウ)」が開催され、世界中から空冷ポルシェとその愛好家たちが集いました。

本イベントは、空冷ポルシェへの情熱に駆られたオーナーたちが、存分にストーリーと想いを語ることができる特別な場です。日本では今回が初開催ということもあり、会場は大いに盛り上がりました。

今回は「LUFT TOKYO」の開催を祝して、EBI DIGITAL STUDIO 編集部がイベントの様子をレポート致します。

KK線を舞台とした「LUFT TOKYO」

本イベントの主催者、「Luftgekühlt(ルフトゲクールト)」は米国・カリフォルニア州発の、空冷ポルシェに特化した体験型カーカルチャーイベントおよびコミュニティです。

創設者は、ポルシェの元ワークスドライバーで、ル・マン24時間レースで2度のクラス優勝を果たしたパトリック・ロングと、クリエイティブディレクター、ハウィー・イデルソン。

「Luftgekühlt」が初めて開催されたのは、2014年のロサンゼルスのベニスビーチにある店舗前駐車場で、元々は小規模なイベント。しかし、多くの空冷ポルシェファンの支持により急速に拡大し、世界へと進出。各国を周るほどのファンカルチャーとなりました。

そのため「LUFT TOKYO」のスポンサーには、ポルシェジャパンを始め、ポルシェと縁深いタグホイヤー、ダンロップ、グランツーリスモといった錚々たるブランドの名が連なります。

元々「Luftgekühlt(ルフトゲクールト)」はポルシェの専門用語であり、それぞれドイツ語で「Luft(空気)」、「gekühlt(冷却された)」を意味。ポルシェでは、Pre-A 356から1998年に終了した993モデルラインまで、ポルシェの歴史におけるすべての空冷車を表す言葉。

全長2kmにわたる東京高速道路(KK線)の半分を占めた会場には、日本だけでなく世界から集まった空冷ポルシェがずらり。その数、なんと204台。1日だけの開催でしたが、イベントには約1万1​​,600人が参加したようです。

蛇のように長い会場は、3エリアに分割され、Aエリアにチューニング・カー、Bエリアには日本のポルシェ・356・スペシャルモデル、そしてCエリアには歴代の911に加えて914が並びます。

役目を終えた料金所や八重洲線が合流するジャンクションを舞台に、そして銀座のビル群を背景に展示された空冷ポルシェ。それは誰も見たことのない、圧巻の景色を生み出していました。

グループCで活躍した962Cが、首都高の料金所を通過する。“ありえない”を実現させた、夢のような光景。
これまで車でしか通れなかった高架道路を、自分たちの足で歩き周れることにも興奮を覚える。
956、ルフト東京、日本、2026、写真: Stefan Bogner /「Luftgekühlt」が都心部を舞台に、そして昼から夜まで開催したのは今回の「LUFT TOKYO」が初めて。夜の帳が下りてビル群に明かりが灯ると、昼とはまた違った雰囲気が会場を包み込む。

東京高速道路(KK線)

東京の銀座周辺(千代田区・中央区・港区)を走る高速道路で、1959(昭和34)年に都市高速道路第8号線として都市計画決定。東京都中央区銀座八丁目(蓬莱橋)を始点に、東京都中央区銀座一丁目(新京橋)まで伸び、首都高速都心環状線及び八重洲線に接続します。都心環状ルートの再編のため、2025年4月5日20時をもってKK線は廃止。「Roof Park Project」によって、歩行者中心の公共的空間として再生・活用される。

ストリートファッションのような
チューニングカー

これまでにクラシックポルシェの走行イベントは数多く開催されていますが、「LUFT TOKYO」は見せ方にこだわった展示がメインです。特にAエリアの展示車両は、ファッション的要素が強いのが印象的でした。

それもそのはず、当イベントは、ファッション業界ではその名を知らぬ者はいない“カリスマ”たちも企画に携わっている模様。

当日はあちらこちらで、そのカリスマ達の姿も見受けられました。

ブランド純正のエクステリアがランウェイで披露するコレクションラインだとすれば、このAエリアのポルシェたちは、さながら街中で自由に個を表現するストリートファッション。

公募による個人所有のチューニングカーが多く展示されており、一台一台、エクステリア、インテリア、そしてエンジンルームまで丁寧に手を入れた様子に、オーナーの情熱を感じられます。

カスタマイズの精神が細部まで行き届いていることに驚く。ホイール、シート、トランクルーム(スーツケースまで!)、そしてエンジンルームにもアクセントのピスタチオカラーが。
展示車両の多くが個人所有のため、年式やカスタマイズの詳細を記す解説版は基本なかったが、1台1台が強烈な個性を放っていた。
レースのDNAを感じさせる、カーボンファイバーをボディ全体に用いた911。

70年かけて醸成された
ニッポンのポルシェ文化

入り口正面に飾られたのは、ポルシェクラブジャパンの元会長がレースで走っていたという911E(1973年製)

「LUFT TOKYO」のメインテーマは、“ニッポンのポルシェ“。

1953年の初輸入以来、70年以上にわたって日本とポルシェが育んできた歴史と文化を「Luftgekühlt」の世界観を通してより深く、豊かに表現しています。そのため、入り口正面から新橋方面へ向かうBエリアには、レーシングカーや930ターボの日本第1号車(1975年製)といった歴史的な車が、KK線の構造や設備をステージに、その歴史の陰影と重なるように展示されていました。

1968年に神奈川県警に寄贈されて、実際に活躍した「ポルシェ912パトカー」(排気量1,600cc 水平対向4気筒)。ミツワ自動車によって4台製作され、1963年から配備が始まり、1973年にその役目を終えたとのこと。唯一現存する貴重な1台が展示されていた。

西銀座JCTからすぐ、傾斜のついたコーナーを利用して日本を舞台に活躍したレーシングカーが連なります。ポルシェミュージアムのような豪華な顔ぶれにも驚きですが、その迫力はまるで現役時代のようで、愛好家たちを虜にしていました。

1964年の第2回日本GPで優勝した904。
1985〜1987年および1989年に全日本チャンピオンに輝いたアドバン・アルファ962C。

コーナーだけでなく、会場には伝説的なレーシングポルシェたちが点在していて、来場者はしきりにカメラを向け、各々のベストショットを収めていました。

伝説的なレーサー・生沢徹さんの911タルガも出展。一瞬、本物のご本人が!と錯覚するが、当時のお姿が入った背景パネル。当日は、実際に生沢さんご本人もファンと直接交流されていた。
1984年の全日本耐久選手権で活躍した、TRUST ISEKIポルシェ956 / ル・マンでの優勝を何度も飾った962C

国内外のカスタム&チューンド・ポルシェ

海外からはRUF Automobile社、Singer Vehicle Designといった、人気の高いカスタマイズメーカーも出展していました。

これらは一般的なレストア/チューニングの解釈を飛び越え、独自の哲学をもって“古くて、新しい”ポルシェを創りだすメーカーで、中には“億越え”の車も。なかなか日本ではお目にかかれない希少なカスタム&チューンド・ポルシェに来場者も興味津々です。

RUF Automoboile社

RUF Automobile社はレストア部門以外に、ポルシェの部品をベースにしつつ、独自の技術でエンジン、シャシー、ボディまで開発・製造。1981年にドイツ連邦自動車局(KBA)より認証を受けたドイツの独立自動車メーカー。

ルーフBTR開発時にテストに用いられたと言われるプロトタイプ、RUF BTR “NATO”。 開発段階のため、目立たないようにと、軍服のようなマットオリーブドラヴカラーに塗られたらしい。

Singer Vehicle Design (シンガー・ビークル・デザイン)

2009年より、空冷ポルシェ911をオーダーメイドでレストアする、カリフォルニア発祥のビスポーク自動車サービス。そのデザイン性の高さから『シンガーによって再構築されたポルシェ911』は国際的に認知、高く評価されています。

GUNTHER WERKS(ギュンターワークス)

カリフォルニア州ハンティントンビーチに本社を置く自動車メーカー。“過去を再現することではなく、過去を進化させること”を掲げ、空冷ポルシェをベースとしたハイエンドなレストモッド(レストア+モディファイ)を手掛けています。

特に993型をベースにしたものは、現代の技術とカーボンファイバーを駆使した究極のパフォーマンスモデルとなっている。
ヨーロッパ最大のカスタムカーショー「ULTRACE」で2025年のチャンピオンに輝いたMADLANE 935ML

MADLANE(マッドレーン)

岡山県を拠点とする日本のカスタムカーショップ・ファクトリー。「車から人へ、そして世界へ」をメッセージに空冷ポルシェやスーパーカーをカスタム。スラムド(超低車高)スタイルで知られており、世界的な評価を得ています。

空冷ポルシェの歴史をなぞる

会場の奥、Cエリアに向かうに連れて356から911へと系譜が流れていきます。空冷エンジンのシルエットと、高架道路から見える近代的なビルはとても対照的で、シーンを切り取るだけでもまるでインスタレーションアートのように芸術的です。

以前、このデジタルスタジオの座談会でクラシックポルシェについて熱く語ってくれた、世田谷認定中古車センターのポルシェクラシック営業責任者、平林の姿を偶然に発見。せっかくなのでこの祝典について尋ねてみたところ、“感無量”といった表情を見せました。

「これだけ多くの空冷ポルシェが一同に会するイベントは、日本では過去にありません。展示車両の多くは一般公募によるものですが、中には半年以上オファーしてやっと展示許可を頂いたレジェンダリーな車両もあり……来場者にとってサプライズとなったでしょう。

本当に、見ごたえのある素晴らしいイベントです。これを機に、空冷ポルシェの文化を楽しめるイベントがもっと広がって盛り上がるといいなと思いますね」(ポルシェセンター青山 世田谷認定中古車センター 統括部長 ポルシェクラシック営業責任者 平林 裕昭)

親子で参加した...? スカイブルーの356。
356や911以外にも、“ワーゲン・ポルシェ” 914の姿も。

日本のポルシェ文化を祝する祭典

会場には空冷ポルシェのほかにも、「Luftgekühlt」オリジナルグッズの販売ブースや工具メーカーの出展ブースが立ち並んでいました。

PEC東京のブース / レーシングカーを支える、総合工具メーカーTONEのブース。

ポルシェジャパンはブースに隣接する特設コーナーにおいて、「クラシックからモダンへ」をテーマに、365と共にタイカンターボGTやマカンエレクトリックといった最先端の電気自動車を紹介。

それは、空冷ポルシェから水冷、ハイブリッド、そして電気へと枝葉を伸ばし広げて、見事に大輪を開かせていくポルシェの進化と拡大の系譜を物語る構図でした。

晴天に恵まれ、大きな感動に包まれながら「LUFT TOKYO」は無事にその幕を閉じました。

この祭典の意義について、パトリック・ロング氏は次のように語ります。

「(このイベントは)最高の車や最も高価な車だけではなく、『Luftgekühlt』と空冷エンジンへの情熱のすべてを物語る、つまりあらゆる要素が少しずつ含まれているのです。

排他性の壁を取り払い、人々を結びつけることが目的です。私たちはこれらの車を観察し、賞賛し、学びたいと思っていますが、人間的な側面も常に同じくらい大切にしています」(パトリック・ロング)

誰でも気軽に訪れ、ポルシェに出会える場所。そこではオーナーたちがポルシェに対するリスペクトをもって、独自に育み、慈しんできた「空冷」の物語が語られていました。

EBI DIGITALSTUDIO では、これからも魅力的な企画やイベント情報をお客さまへ発信して参りますので、ぜひ今後もご期待ください。

Words:Yuki Kobayashi / Tatsuhiko Kanno
Photographs:Tatsuhiko Kanno / Porsche AG

– TEAM EBI DIGITAL STUDIO –