REVIEWS

後編|試乗レビュー
ハイブリッドで覚醒する“至高の走り”

ポルシェの歴史に深く刻まれる、ハイブリッドの技術革新。

フェルディナント・ポルシェ博士が世界で初めて、走行可能なフルハイブリッド車を開発してから約100年。環境問題に呼応するように、世界でBEVやハイブリッドの開発競争が始まる中、ポルシェはレースを舞台にハイブリッドテクノロジーを進化させてきました。

2017年ル・マン24時間レースで総合優勝を飾り、2015~2017年のル・マン3連覇を成し遂げた919 ハイブリッド。 Porsche AG

2020年代に入り、過酷な勝負の世界で鍛えられたハイブリッドテクノロジーが、カイエンやパナメーラのような公道を走る市販車へと、さらに色濃く反映されるようになりました。そして世界中の愛好家たちがその至高のドライビング・フィールを享受できるようになったのです。

そこで前回の <前編|ヒストリー> に引き続き、今回はカイエン、パナメーラが魅せる実際の走りを都心の公道でレビューすると共に、ポルシェが提供するハイブリッドの真価を紐解いていきたいと思います。

●今回使用した試乗車
2026年式 / カイエン Eハイブリッド
2027年式 / パナメーラ 4 Eハイブリッド

電動化が磨き上げた“走りの密度”

カイエン、パナメーラいずれにおいても、最新モデルに乗ってまず感じるのは一般的なプラグインハイブリッド車(以下、PHEV)の「電動化=効率化」という既存のイメージを軽やかに裏切る、極めて濃密かつ洗練されたドライブフィールです。

最新モデルは過去モデルと比べて、電動モーターの出力比率を大幅に引き上げながら、エンジンの出力を逆に落として全体をリバランスさせているのが特徴。

そのあたりの絶妙な匙加減によって、より先進的な乗り味にファインチューニングされているようです。

すべてが滑らかで、上質かつスポーティな乗り味に

ポルシェのPHEVには、E-Power / Hybrid / Sport / Sport Plus、という4つの異なる走行モードがあります。

ハイブリッドモードでアクセルを軽く踏み込んでいくと、電動モーターの豊潤なトルクが瞬時かつ静かに立ち上がり、車体は抵抗感なく前へと「グググッ」と滑り出します。

その出だしは驚くほどスムーズで、PHEVの重量級ボディを忘れさせるほど。

そして力強く床までアクセルペダルを踏み込むと、エンジンがうなり、回転上昇とともに一気に車速を上げていきます。このモーター/エンジンの切り替えは本当に見事で、エンジンが目覚める瞬間は、あえて意識していないと気付かないほどです。

エンジン自体の存在感がそれなりにあるにも関わらず、その初動がスムーズすぎて気付きづらいという、何やら不思議な感覚を覚えます。

このあたりの調教は、すでに15年以上にわたってハイブリッドの市販車を作り続けてきたポルシェが積み重ねた、熟成のシステム制御の賜物だと強く感じます。

ハイブリッド第3世代の快活なドライブフィールは、初期のハイブリッドモデルと比べると、まるで別物です。

911 GT3 Rハイブリッド、 918スパイダー、 919ハイブリッドといったスーパーマシンを経る過程で、エンジンとモーターの協調制御、トランスミッションの緻密なセッティング、そしてシャシー全体の統合制御が緊密に連携してきたためなのでしょう。車のあらゆる動きが一つの生命体のように一体化し、とにかく滑らかで力強く、走りの密度が濃いのが印象的。

乗っていて至極心地良く、本当に優れた最新鋭のマシンなのだな…という感触。

ポルシェを匂わす正確無比なハンドリング

ポルシェが長年培ってきたアジリティはどうでしょうか。

ポルシェだからこそ味わえる「正確無比なハンドリング」は、PHEVになっても一切損なわれていないと感じます。ステアリング操作に対する応答は緻密で、車両は常に路面に吸い付くように安定しながら、意のままに向きを変えます。

SUVであるカイエンのロールは抑えられ、セダンのパナメーラはよりフラットかつしなやかに……いずれも“人馬一体”と呼ぶにふさわしい感覚を維持しています。バッテリー搭載による低重心化も相まって、どっしりとした安定感としなやかな上質さが高次元で両立しています。

特筆すべきは、911とは違って、街中レベルでのスピード領域でも両車ともにドライビングプレジャーを十分以上に堪能しながら楽しめてしまう点です。

現行型911の本来の良さをドライバーが運転を楽しむ領域まで持っていくには、街中レベルのスピード領域ではとても難しいほど限界性能が上がってしまっています。

その点、カイエン・パナメーラのPHEVは純粋に車重があるため、逆のメリットとして街中レベルのスピード領域でも車体のコントロールをドライバーが積極的に楽しめてしまうことに、今回の試乗であらためて気付かされました。

充電せずとも長距離ドライブを快活に

そして何と言ってもPHEVの最大の利点は、長距離ドライブでも心配無用のエネルギー回生機能にあります。

仮に充電環境に恵まれない場合でも、高速道路でエンジンを一定の速度で回転し続ければ、バッテリーに回生エネルギーが自ずと溜まっていきます。市街地に下りる頃には、EVモードで走行できるほどに目に見えてチャージされていました。慣れない土地で充電施設を探す煩わしさから解放され、悠々とドライブを楽しめるでしょう。

今回の試乗でも、走るシチュエーションや気分次第で車の乗り方をアレンジしながら、新たなドライブの楽しみを得られるのがPHEVなのだと、あらためて感じました。

ここまでPHEVの話を進めてきましたが、実際のところカイエンとパナメーラではキャラクターがまったく異なります。2つのモデルは初登場からこれまでにそのキャラクター性をそれぞれ確立してきました。

ドライバーの好みの乗り味やライフスタイルによっても選び方が変わるので、それぞれの特徴にフォーカスしてみましょう。

パナメーラに潜む二面性

パナメーラ4 Eハイリッドに試乗して強く感じること、それは1台の中で明確に切り替わる、ラグジュアリーとスポーティの2面性です。

ひとつは、ラグジュアリーサルーンのような静穏な姿。電動走行による静粛性と滑らかさが際立ち、エンジン始動時ですら音は柔らかで、気が付いたときには既にクワイエットラグジュアリーの心地よさに身を委ねています。

外界のノイズはしっかりと遮断され、同乗者との会話も自然に弾む。キャビンが広く、ドライバーは悠々とした運転が可能。助手席は、まるでプライベートジェットの特等席のような特別感がある。
後部座席の足元もゆとりがあり、同乗者は快適に過ごすことが可能(モデル身長160cm)。前席は176cmの男性のポジションに合わせているので、どれほどゆとりがあるかがお分かりいただけるだろう。

そして、ひとたびスポーツモードに切り替えた瞬間、太いエキゾーストパイプから迫力の排気音を発します。右足の動きに対して鋭いレスポンスを返す猛々しい6気筒エンジンは、V型と水平対向の違いはあれど、まるで911そのもの。

試乗車には、オプションでスポーツエグゾーストが装着されていたため、その2面性がより強調されている印象です。

そして、パナメーラとカイエンの決定的な違い、それはPDKトランスミッションです。

ヘッドレストと一体のアダプティブスポーツシートをオプションで装備すれば、タイトに身体をホールドするため、より911のようなスポーツカーらしい乗り心地を堪能できる。

レース生まれのPDKトランスミッションが、マニュアル車のようなダイレクト感をドライバーに伝え、素早いシフトチェンジを実現。スポーツカーのフィーリングを街中でも存分に、そして気軽に楽しむことができます。

そこが、変速スピードが穏やかな、トルクコンバーター式オートマチックミッションのカイエンとの決定的な違いと言えるでしょう。

ラグジュアリーサルーンとスポーツカー、まったく異なる表情をひとつのボディに共存させ、どちらの姿にも「これぞポルシェ」と心の高ぶりを覚えてしまうパナメーラ。ここにこそ、ポルシェが積み重ねてきた歴史と技術の完成度の高さがあるように感じられます。

“ライフ”をより充実させるラグジュアリーSUV

カイエンといえば、スポーツカーブランドにして初のSUVモデル。2tを軽く超える車重をスムーズに動かすためにも、トランスミッションは悪路走破性、牽引能力(最大3.5t)の高いトルクコンバーター式の多段AT(ティプトロニックS)を採用しています。

PDKであるパナメーラに比べて変速はよりシームレスにつながるので、街中では究極的にスムーズでありパワフルなイージードライブを堪能させてくれます。

今回試乗したのは、最もベーシックなカイエン Eハイブリッド。といっても、システム出力で470PSを誇るパワーを持ち合わせています。3.0LのV6ターボエンジンにプラスして、電動モーターによる分厚いトルクも味方してくれているため、非常に芳醇でリッチなアクセルの踏み応えを感じます。

現行のカイエンEハイブリッドになってからは、コンペティターであるスーパーラグジュアリーブランドのSUVたちと比較しても、“味”は違えど肩を並べるレベルのクオリティの乗り味に進化しており、フラッグシップSUVとしての威厳をあらためて誇示していると感じられます。

また、カイエン Eハイブリッドで特筆すべきは、広いラゲッジスペースです。ラゲッジルームの容量はSUVタイプで約772リットルと、「ポルシェデザイン・トロリー 」のLサイズ(115L)を置いてもまだまだ余裕が。トノカバーを外せば、同サイズのトロリーケース(いわゆるヨーロッパ旅行サイズ)が丸々4つ収まるため、家族4人分のラゲッジを積み込むことができます。

リアシートを折りたたむと、さらに積載量は増え、倍以上の1,708リットルまで拡張される。
もちろんキャビンスペースも広々。ルーフ部分をオプションのパノラマルーフに変えれば、開放感が一気に高まる。同乗者がもっとも喜ぶオプションの一つだろう。
今回の撮影ポイントが羽田空港へ降り立つフライトルートの真下付近だったため、頻繁にジェット機が降下してきていた。積載するトロリーケースとともに、彼方の地へと想いを馳せることができるのは、カイエンならではの感覚。

パナメーラが街中でポルシェらしいドライビング・フィールを独り占めできるモデルであれば、カイエンは家族で共にポルシェ時間を共有しながら、かけがえのない思い出を創っていける希少なモデルといえます。

日常的な送迎、遠方への長距離ドライブ、はたまた空港までのひとときなど、日々の何気ない時間にドライバーはポルシェらしいフィーリングを楽しみながら、家族との思い出を積み重ねることができるでしょう。

唯一無二の世界観を味わえる

パナメーラもカイエンも運転を重ねるたびに、ポルシェならではのレーシングテクノロジーが、それぞれのパッケージに合う形で凝縮されている最高峰のマシンであると気付かされ、一般的に抱くプラグインハイブリッドへの印象が瓦解していきました。

今回の試乗で、ポルシェのPHEVは現在選択できる実用自動車の中で最良の選択肢の一つであると、あらためて実感することができました。

最新のハイブリッドテクノロジーによって、運転の“楽しさ”とともに“ダイレクト感”も純度が増しており、4ドアの実用自動車という括りの中において、ドライビングプレジャーの一つの最高到達点に達しているのではないでしょうか。

単純にエンジン車とEVの良いとこどりというだけではなく、高い技術力と経験によって、双方の良さを一つにパッケージにうまくブレンドし、独自の世界観を創り出しています。

だからこそ、真のポルシェを日常生活の中で感じたい方が「これぞ」と選ぶ大本命になるのは間違いありません。

EBIグループが運営する、ポルシェスタジオ銀座、そしてポルシェサービスセンター東京ベイ辰巳では、「モーター×エンジンの比較試乗プラン」だけでなく、ハイブリッドモデルを心ゆくまで試乗できる「ハイブリッド試乗プラン」をご用意しています。

ポルシェプロが徹底的に走り込んで選定した試乗コースで、ポルシェハイブリッドの可能性をぜひご堪能ください。

ハイブリッド試乗プランは、以下のバナーから詳細をご覧ください。

お気軽にお申し込みをお待ちしております。

Words:Tatsuhiko Kanno / Yuki Kobayashi
Photographs:Doshi Hirata

– TEAM EBI DIGITAL STUDIO –